この記事を書いたのは…
小針亜葵子
PR/オウンドメディアプロデューサー編集プロダクションやアパレルブランド勤務を経てウェブメディア業界へ。月間500万PVの男性メディア編集長や有名ガールズファッションイベント公式メディアの事業責任者などを経て、現在はPR/コーポレートブランディングを担当。2016年より現在まで、メディア運営のノウハウを生かし、男性グルーミングブランドのオウンドメディアプロデューサーも担当している。
オウンドメディアの適切なKPI設定方法と事例
オウンドメディア運営の成功へのカギは、適切なKPIの設定が重要です。
1. 目標設定…まずは、事業目的や課題、コンテンツ戦略に沿った目標(KGI)を明確に設定し、測定可能な数値目標を含むKPIを設定しましょう。
2. Web解析ツールの活用…KPIを測定するためには、ツールを使った効果的な分析が欠かせません。必ずツールを使ってKPIの進捗を確認しましょう。
3. 運用改善…データを基に分析を行い、目標(KGI)達成に向けた運営改善を進めましょう。この時、フェーズに合わせて適切なKPIを設定したり、柔軟に変更することも大切です。
KPI事例
企業のSEO対策の一環として運営されるオウンドメディア(toB)などでは、アクセス数や資料ダウンロード数、新規問い合わせ数などが重要なKPIとなる場合が多く、商品のブランディングや認知拡大のために運営される生活者向けサイト(toC)では、PVやユーザー数がKPIとなることが多くみられます。
そもそもオウンドメディアとは?
オウンドメディアとは、企業が自社で運営・管理するコンテンツメディアのことを言います。広告費をかけずに集客が可能であり、SEO対策やブランディングにも有効な手段であるため、マーケティング手法として定着し多くの企業が取り組んでいます。
具体的には、自社サイト内のブログやニュースで最新情報を発信したり、コンテンツマーケティングを活用して集客を目指すウェブサイトのことを指します。
▼オウンドメディアの意味や目的、メリットをもっと知りたい方はこちらもチェック!
【プロが解説】オウンドメディアとは?目的やメリット、運営ポイントや成功事例をご紹介 - 株式会社スマートメディア
企業のデジタルコミュニケーション施策の1つとして定着したオウンドメディア。これからオウンドメディアを立ち上げ、目標を達成するためには、「オウンドメディア」を正しく理解することが大切です。この記事では、オウンドメディアの意味や目的、そして運営するメリットを成功事例とともにわかりやすく解説します。
KPIとは
KPI(Key Performance Indicator)は日本語で「重要業績評価指標」と訳され、組織や個人が特定の目標や目的を達成するために使用される「指標」や「評価基準」のことを意味します。
KPIの定義と目的
KPIは、組織や個人が設定した目標や戦略の進捗を測定し、評価するために使用されます。KPIを設けることで、ビジネスやプロジェクトのゴール達成までの進捗を段階的に測定し、成果を評価することが可能となります。
KPI設定時の注意点
KPIは、現実的に達成可能かつ測定できる目標を設定することが重要です。そして、ゴールを達成するまでの過程に重要な指標かつ、プロジェクトメンバーが明確に理解できるものでなければなりません。
KPIを設計する際には、SMARTという基準を踏まえて設計することがおすすめです。
Specific:明確か、具体的か
Measurable:測定可能か
Achievable:実現可能か
Relevant:達成可能か
Time-bound:期限を決めて
つまり、KPIは「具体的」「明確」で「測定可能」「達成可能」「関連性」があり、「時間枠」が設定されていることが望ましいです。そして、継続的な分析と改善も欠かせません。
KPIとKGIの関係性
KPI(Key Performance Indicator)とは先述の通り、目標達成のためにパフォーマンスを評価する指標のことです。また、KGI(Key Goal Indicator)とは、最終的な目標を示す数値のことです。
両者の関連性は、KPIが「KGI達成に向けた過程で重要となる目標を示す」ため、KPIはKGIに直結したものであるべきと考えられています。例えば、「売上増加」がKGIであれば、「WEBサイトの訪問数」や「購入率」などが適切なKPIとして設定できます。
KPIとKGIには、以下のような特徴があります。
KPIを決めるには明確なKGIを定めることが最も重要
KGI…目標は1つだけを設定する
KPI…段階別に設定し、複数あることが一般的
KPIの選定は、事業目的に応じたものが重要です。具体的には、その企業の事業形態やコンテンツ戦略に基づいてKGIを設定し、その目的を達成するために最適なKPIを選ぶことが求めらます。
例えば、BtoB企業の場合、「リード獲得」という目標を立てた場合、CV数や新規顧客獲得数が重視されることが多く、そのための「資料ダウンロード数」や「お問い合わせ数」をKPIとして設定することが適切です。また、選定したKPIに基づいて、運用改善を進めることが結果につながります。
このように、オウンドメディアマーケティングにおいて、明確なKGIを決めてKPIを設計することは、オウンドメディア運営の成功に欠かせません。オウンドメディアを通して達成したいことは何かを明確にし、メンバー全員で認識統一することが、KPI設計において何より大切です。
フェーズ別のオウンドメディアKPI設定
オウンドメディア運営において成功の鍵を握るのは、各フェーズにおけるKPI設定です。これを的確に行うことで、企業の目標達成に向けた効果的なコンテンツ制作や、マーケティング施策の展開が可能となります。
ここでは、フェーズ別のオウンドメディアKPI設定について、具体的な指標とその検証方法をご紹介します。
カスタマージャーニーに基づくKPI設計を
KGIを決めて認識統一ができたら、次にKPIを設定していきます。この時、ユーザーの心理カスタマージャーニーが大きく関係しています。
カスタマージャーニーとは、顧客が最初に自社の商品やサービスに関心を持ち(認知)、それを購入・利用するまで(コンバージョン)の一連のステップを、心理的変化や行動経験をもとに表したものです。KPI設計においてこのカスタマージャーニーを理解することで、ユーザーの気持ちに寄り添ったコンテンツづくりに役立ち、オウンドメディアの顧客体験を向上させることにつながります。
オウンドメディアでは、企業側が発信したい情報をコンテンツ化しがちですが、あくまでも目的達成のために、設定したターゲットユーザーが求めるメディア運営を実践することが大切です。
立ち上げフェーズで重要なKPI(サイト構築前〜ローンチ後6ヶ月ほど)
オウンドメディアを立ち上げることが決まり、ローンチの準備をする期間〜公開後(〜6ヶ月ほど)のフェーズでは、具体的な数値目標は設定しにくい傾向があります。
理由は、そもそもサイトの存在を知らない、認知がない状態がほとんどであり、PVやUUを設定しても成果をすぐに得ることが難しいことが挙げられます。ただし、コンテンツ制作数や運営体制の規模によって、公開時から数値目標をKPIに設定できることもあります。自社の状況や運営体制を加味して、適切なKPIを決めましょう。
立ち上げ初期のKPIでは、メディアの編集体制やコンテンツ制作体制といった運営にまつわる体制を整えるために、具体的な行動目標にすることも良いでしょう。
・ペルソナ設定
・サイトコンセプト設定
オウンドメディアのゴールが決まったら、ターゲットユーザーに最適なアプローチを行うために、ペルソナ設定を行いましょう。また、サイトのコンセプトを言語化し、誰に対しての何のためのメディアなのかを明確にすることが大切です。
▼ペルソナ設定について詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめです!
【初心者向け】ペルソナ設定とは?メリットや必要項目、設定方法を解説 - 株式会社スマートメディア
ペルソナ設定とは、商品やサービスを購入してくれる架空のユーザー像を作ること。ユーザーニーズを読み取るのに役立ち、マーケティングを有利に進められます。この記事では、ペルソナ設定のメリットや設定する項目、設定方法を解説します。
ペルソナ設定、サイトコンセプトが決まったら、サイト運営に必要な項目を洗い出し、行動目標としてKPIに設定することがおすすめです。しっかりと体制づくりを行い整備することで、サイト運営体制の基盤が強固なものとなり、長期的なオウンドメディア運営が可能となります。
<運用体制に関わる行動目標>
・全体の統括や進捗管理(プロデューサー/責任者)
・コンテンツ制作まわりの目標
- SEO記事制作(対策キーワード選定や構成案の作成)
- ライター管理(ディレクター/ライティングディレクターの設定)
- 記事の執筆(ライターがいる場合はライター管理に含む)
- 校正、校閲
- 記事管理(編集/公開/非公開など)
- 数値計測、効果検証、レポーティング(メディアローンチ後に必要)
・サイト公開まわりの目標
- サイトデザイン(サイトデザイン/サムネイル/バナー/SNSコンテンツ作成など)
- サイト構築(コーディングなど)
コンテンツ制作フェーズ(ローンチ後〜1年間)
コンテンツが十分でないローンチ初期では、制作本数や公開本数をKPIとして設定することも多くあります。
記事本数を上げれば必ずPVが獲得できる訳ではありませんが、そもそもメディアにコンテンツがないと、集客につながりません。
また、記事があまりなかったり、更新感のないメディアに人は集まりにくいため、まずはコンテンツの本数をKPIとすることも適切と言えます。
- コンテンツ制作/公開本数
例:ローンチ後半年で100記事公開など、期限を必ず設ける
成長フェーズ(集客に力を入れる時期:1年〜1年半)で重要なKPI
オウンドメディア成長期では、潜在ユーザーに向けたコンテンツを制作して、認知・注意を促します。
コンテンツ制作期では、ユーザーニーズに沿った記事を制作し、継続して発信ができている状態を作ります。この状態を保ちながら、自社の商品を知ってもらうために、ユーザーにより“見られる”ウェブサイトにすることを目標にしたKPIを立てることが大切です。
-対策キーワードの検索順位
オウンドメディアでターゲットとしたSEOキーワードの順位を指標とし、認知拡大をはかる
- 訪問者数(PV、UU、セッションなど)
WEBサイトへのアクセス数を確認し、集客効果を評価する
- SNSシェア数
記事の共有数から、コンテンツの魅力や拡散力を評価する など
この時期は、自然検索順位を獲得できる記事も増えてきているので、新規記事を制作するのか、既存記事をメンテナンスして、より質の高い記事にして上位表示を狙うのかも検討しながら進めましょう。
成長フェーズでのKPIの見直し(ファン化を目指す時期:1年半〜2年間)
コンテンツを継続的に発信し、一定の集客ができている状態の成長フェーズでは、エンゲージメント率に着目したKPIなどを設定することもおすすめです。
当初に立てていたPVやUUのKPIが達成されていない場合は、サイト分析をより詳細に行い、集客目標を達成できるようにKPIを見直しましょう。
- アクセス解析
検索キーワードや流入元、滞在時間などを調査し、ユーザーのニーズや行動パターンを分析する
(直帰率、ページ再訪率、スクロール率、読了率、回遊率、ページ滞在時間 など)
- リピートユーザー率
ファン獲得やブランド力向上を示す、再訪問者の割合を測定する(新規リピーターの割合)
ページ回遊率や滞在時間が、KPIとしてふさわしくない場合もあります。例えば、お悩み解決系コンテンツは、早く正しい解決策を知りたいユーザーがほとんどです。
そのため、満足度が高いコンテンツは滞在時間が短くなります。このように、自社が運営するサイトのジャンルにもよるので、あくまでも「ゴールを達成するための、正しいKPI設定を心がけましょう。
成熟フェーズでの最適なKPI(成果を上げる時期:2年〜)
一定の集客数があり、リピーターやファン化への取り組みが積極的にできているオウンドメディアでは、もともと定めていたKGIに直結する、コンバージョン(資料ダウンロード数、お問い合わせ数、商品の購入数、サービス契約数、LPへの送客数など)をKPIに設定することが最適です。
- サイト内のコンバージョン率
「資料ダウンロード」や「お問い合わせ」「商品の購入」など目的の行動に至る確率を明確にし、効果を把握する
- 登録ユーザー数
目標ユーザーへの訴求力を検証するため、「新規アカウント登録」や「メルマガ購読者数」「会員登録者数」を測定する
オウンドメディアのコンテンツ戦略とKPI
オウンドメディアは企業やサービスをPRするための自社メディアであり、その運営においてKPIの設定が欠かせないということは、先述の通りです。ここでは、KPIを設計の際に必要なコンテンツ戦略について解説します。
コンテンツ戦略とは
コンテンツ戦略とは、そのメディアの目的や目標を達成するために、どのようなコンテンツを制作・配信すべきかという計画のことをいいます。
KPIはコンテンツ戦略の成果を測定するための指標であり、マーケティング活動の効果を数値で把握することができます。具体的なKPIを設定することで、コンテンツ戦略の効果が明確に測定できるメリットがあります。
オウンドメディア運営の際には、コンテンツ戦略をしっかりと立て、測定できるKPIを設定し、効果測定〜改善までができるようにしましょう。
SEO対策を加味したKPI設定
オウンドメディアの戦略にはSEO(Search Engine Optimization)対策も重要であり、KPI設定においてSEO対策も考慮した指標が求められています。具体的なSEO対策に関連するKPIは以下の通りです。
- 検索エンジンからの流入数
- 自社サービスや商品に関連するキーワードの検索順位
- ページの表示速度
- コンテンツの更新頻度
これらのKPIを設定し対策の効果を測定することで、より質の高いユーザーの訪問につながります。オウンドメディア運営では、SEOコンテンツを作成するメディアが多いので、立ち上げ段階でしっかりと対策キーワードを選定し、優先順位を持ってコンテンツ制作を進めていきましょう。
SNS活用の重要性とKPI
SNSはオウンドメディアのコンテンツを広める手段として非常に有効であり、SNS活用がオウンドメディアを通した集客を最大化させるポイントにもなりえます。
より多くのユーザーにアクセスしてもらう機会が増え、自社商品やサービス、会社の認知度や評価を向上させることが期待できます。そのため、SNSの活用に関するKPIも設定してみるのも1つの方法です。
主なSNS関連のKPIは以下になります。
- SNSのフォロワー数
- いいね!や保存、シェアの数
- コンテンツへのコメント数
これらの指標によって、SNS活用の効果を定量的に評価することが可能になります。SNSからサイトへの送客すう等もコンテンツ毎に把握し、SNSと相性が良いコンテンツの傾向を掴むなど、発信した結果をしっかりコンテンツ制作から拡散方法に活かしましょう。
ユーザー獲得とリピートアクセスのバランス
オウンドメディア運営において、新規ユーザーを獲得することで、広範なターゲットにメッセージを届けられます。一方、リピートアクセスを促すことで、ユーザーのロイヤリティを高め、長期的なビジネスチャンスが期待できます。
そのため、KPIにはユーザー獲得とリピートアクセスのバランスを見る指標を入れておくことをおすすめします。具体的な指標としては以下のようなKPIになります。
- 新規ユーザー数
- リピートアクセス率
KPI設定時の注意点と効果的な運用方法
定期的なKPIの見直しと改善
KPIを定期的に見直し改善することは、オウンドメディア運営の効果を継続的に向上させるために不可欠です。具体的には、運用が軌道に乗った段階で、数値目標を見直すことです。
また、新規事業や市場環境の変化に対応するため、定期的な戦略見直しは必須です。これにより、オウンドメディアの目標達成を実現し、企業の成長を後押しするマーケティング効果を得ることが期待できます。
数字だけに捉われず質も追求する
オウンドメディア運営では、コンテンツの質やサイトの完成度を追求することが、求める成果を生む上で非常に重要な姿勢となります。
明確なKIG、それを達成するためのKPIを設定し、数字を追うことは必要なことですが、数値だけに注目しすぎると、ユーザーのニーズを見失いがちになります。
例えば、アクセス数やSNSシェア数だけに焦点を当てすぎず、コンテンツの質やユーザー満足度を評価する指標も一緒に設定するなどして、バランスを取ることが大切です。これにより、ユーザーに提供するオウンドメディアとしての価値を最大化し、目標達成につなげることができます。
いつでも、「ユーザーが何を求めているのか」「ユーザーにとってあるべきサイトの姿は」ということを忘れずにサイト運営を行うことが、成果を生むオウンドメディア運営において何より大切です。
オウンドメディアで成功するためのKPI設定を
オウンドメディアでの成功には、お伝えしたように、適切なKPI設定と効果的な運用方法が不可欠です。明確な目標設定や定期的なKPI見直しを行い、数値だけでなく質にも注力しながら、効率よく運営しましょう。
また、事例や他社の戦略を参考に、独自の戦略を構築し、長期的な視点を持って取り組むことが大切です。これらのポイントを押さえたKPI設定が、オウンドメディアの成功へと導きます。
▼さらに詳しい情報や具体的な事例が知りたい方は、弊社までお気軽にお問い合わせください。